無耳唄はネットの一部界隈で時折話題に上る芸術家だ。
彼女の絵は人を選ぶ。血、死肉、殺人、屍体。悍ましき赤で彩られた油絵たちを、不意にSNSに無言で上げる。観衆はそれを疎んだり、忌避したり、揶揄ったり、扱き下ろしたり――――心酔、したり。
初めて開かれた無耳唄の個展に、単身訪れた女子中学生・戸練火花も、そんなファンのひとりだった。無耳唄の作品に魅せられ、脳内で妄想を繰り広げその背徳に溺れる少女は、意を決して個展の会場にいた無耳唄本人に、思いの丈を綴った手紙を渡した。
――――次に、気付いた時には。
戸練火花は、無耳唄の自宅にいた。手錠も足枷もない、が、頭に走る鈍痛……少女が、血に魅せられた芸術家によって拉致されて、部屋に監禁されているのは明らかだった。
残酷な絵を愛する芸術家と、そんな芸術家を敬愛する女子中学生。ふたりの奇妙な共同生活が、始まった。